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一般建設業許可取得後の義務等

建設業の許可を受けることで、一般許可においては工事の請負金額の制限がなくなり、特定許可においては元請として下請発注できる金額の制限がなくなります。
制限は解除されますが、義務も生じます。どういった義務が発生するかを確認します。
まずは一般建設業許可についてです。

許可を受けた業の工事に関し、以下の義務が発生します。

  1. 標識の掲示
  2. 帳簿等の備え付け
  3. 工事現場への技術者の配置
  4. 一括下請負の禁止
  5. 下請代金の支払い
  6. 適正な契約締結
  7. 施工体制台帳及び施工体系図の作成
  8. 各種届出義務
  9. まとめ

詳しく見ていきます。

1.標識の掲示

許可を受けた店舗(営業所等)には次の内容を示した標識(=建設業の許可票)を掲示しなければなりません。

  • 商号又は名称
  • 代表者の氏名
  • 一般建設業又は特定建設業の別と許可を受けた業種、許可番号、許可年月日
  • この店舗で営業している建設業
  • 標識のサイズは縦35cm以上、横40cm以上で規定の様式あり

許可を受けた業種には、個人もしくは法人として受けた建設業許可すべてを表示します。
この店舗で営業している建設業は、その店舗で許可を受け営業を許された業種です。

建設工事現場にも同様に次の規定に沿った許可票を掲示します。

  • 商号又は名称
  • 代表者の氏名
  • 主任技術者又は監理技術者の氏名、専任の有無、資格名、資格者証交付番号
  • 一般建設業又は特定建設業の別と許可を受けた業種、許可番号、許可年月日
  • 標識のサイズは縦25cm以上、横35cm以上で規定の様式あり
  • 現場ごと、元請下請の別なく許可業者すべてにおいて掲示義務がある

これにより、営業や工事が建設業許可を受けた適法な業者によってなされていることを対外的に明らかにします。それぞれ、公衆の見やすい場所に掲示しなければなりません。

2.帳簿等の備え付け

建設業者は、営業所ごとに、その営業に関する事項で法令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書を保存しなければならないとされています。
帳簿等は5年間(発注者から直接請け負った新築住宅建設工事に関するものは10年間)保存しなければなりません。

また、発注者から直接建設工事を請け負った契約(元請業者になる場合)においては、帳簿等のほかに完成図・発注者との打ち合わせ記録・施工体系図(作成義務がある場合)を10年間保存しなければなりません。

帳簿等は営業所ごとに保管しなければならないため、本社で一括して保存することはできません。
書面ではなく電子データで保存することもできます。この場合は電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。

3.工事現場への技術者の配置

建設業許可を取得した工事を行う場合、元請・下請に関わらず、原則としてすべての工事現場に主任技術者等を専任で配置しなければなりません。
ただし、例外的に兼任を認める要件もあります。建設業全体での人手不足や物価上昇もあって、その要件は度重なる法改正で変動しています。(実務では必ず現行法令を確認してください。)

まず、主任技術者の複数現場の掛け持ち(兼任・兼務)についてです。
税込請負金額が一定額を超えると、現場に主任技術者の専任性が求められます。

主任技術者等が複数現場を兼任できる要件

  • 公共性のある建設工事において、請負金額が税込4,500万円未満
  • 建築一式工事において、請負金額が税込9,000万円未満

建設業法 第二十六条(令和6年12月13日施行)
建設業法施行令 第二十七条(令和7年2月1日施行)

この場合の「公共性のある」とは、個人住宅や長屋(共用廊下や共用階段を持たず、各戸の壁を共有した連なった住宅)以外を指します。
この金額までの請負であれば、主任技術者が複数現場を掛け持ちできるということです。
兼任できる現場数や現場間の距離に規定はありませんが、建設業法が建設工事の適正な施工を確保することを目的としていることを考えても、常識的な範囲で人員配置すべきでしょう。

さらに昨今の建設業の人手不足を鑑みて、令和6年12月に建設業法及び建設業法施行規則が改正され、専任義務がさらに合理化されました。
これにより、上記の請負金額を超えても ①主任技術者等が複数現場を兼任できる特例 と ②営業所技術者が主任技術者等を兼任できる特例 が追加されました。
それぞれ次のようになります。

① 主任技術者等が複数現場を兼任できる特例の要件

  • 請負金額が税込1億円未満(建築一式工事においては2億円未満)
  • 兼務できるのは2現場まで
  • 兼務する現場間の距離が、1日の勤務時間内に巡回でき、かつ、緊急時におおむね2時間以内に移動できる程度
  • それぞれの現場が3次下請までで完成すること
  • それぞれの現場に、主任技術者等と連絡その他必要な措置を講ずるための者(土木一式又は建築一式工事においては、その業種の実務経験が1年以上ある者)を置くこと
  • 工事を請け負った建設業者がそれぞれの現場の施工体制を、主任技術者等を通じ、情報通信技術を用いて確認する措置を講じていること
  • 工事を請け負った建設業者が、各現場に関する規定の帳簿等(電磁的記録媒体を含む)を作成し、現場に備え置き、営業所で保存すること

建設業法 第二十六条(令和6年12月13日施行)
建設業法施行令 第二十八条(令和7年2月1日施行)
建設業法施行規則 第十七条の二(令和6年12月13日施行)

② 営業所技術者が主任技術者等を兼任できる特例の要件

  • 営業所技術者が請負契約を締結した建設工事であること
  • 請負金額が税込1億円未満(建築一式工事においては2億円未満)
  • 営業所技術者と兼務できるのは1現場のみ
  • 兼務する現場間の距離が、1日の勤務時間内に巡回でき、かつ、緊急時におおむね2時間以内に移動できる程度
  • 現場が3次下請までで完成すること
  • 営業所と現場に、主任技術者等と連絡その他必要な措置を講ずるための者(土木一式又は建築一式工事においては、その業種の実務経験が1年以上ある者)を置くこと
  • 工事を請け負った建設業者がそれぞれの現場の施工体制を、主任技術者等を通じ、情報通信技術を用いて確認する措置を講じていること
  • 工事を請け負った建設業者が、各現場に関する規定の帳簿等(電磁的記録媒体を含む)を作成し、現場に備え置き、営業所で保存すること

建設業法 第二十六条の五(令和6年12月13日施行)
建設業法施行令 第三十三条(令和7年2月1日施行)
建設業法施行規則 第十七条の五(令和6年12月13日施行)

配置技術者の専任要件をよく理解することが、人員配置の効率化につながります。逆に、法令に違反した人員配置をしてしまうと、許可が取り消されたり罰則を受けたりすることがあります。
法令を順守し、現場にも負担の少ない人員配置を心掛けることが大切です。

4.一括下請負の禁止

許可を受けた建設業を元請として請け負ったとき、それを一括して下請に出してはなりません。
また、許可を受けた建設業を下請として請け負うとき、元請建設業者から一括して請け負ってはなりません。
つまり、一括で下請に出しても請け負ってもダメということです。

一括下請負が禁止されているのは、施工責任の所在を明らかにすることで安全と品質を確保し、発注者を保護するためです。 
では、この一括下請負(丸投げ)の判定基準を具体的に見ていきます。

まず、国土交通省が平成28年10月14日付で公表した「明確化した判定基準」を見てみます。
これによると、元請・下請それぞれが果たすべき役割が具体的に定められ、それらが果たされない状況であれば一括下請負とみなされます。

元請としては工事全体に関して、施工計画書等を作成・確認・修正し、工程管理・品質管理・安全管理及び技術的指導や発注者・近隣住民との調整などを行う必要があります。(元請の実質的関与
下請負人としては請け負った範囲の建設工事に関して、施工計画書等を作成・確認し、進捗確認や元請への施工報告、元請との協議、下請負人の調整などを行う必要があります。
リンク先の別紙3に具体例もありますので、ご確認ください。

一括下請負は原則として禁止です。ただし、以下の場合には例外として認められます。

一括下請負禁止の例外の要件

  • 民間工事であること(多数の者が利用する施設又は工作物を除く)
  • 元請業者が発注者にあらかじめ書面もしくはデジタル手続きによって承諾を得ている

建設業法 第二十二条

一括下請負に出すことができることと元請責任を逃れることは全くの別問題です。
一括下請負とは別に主任技術者等の配置義務はありますし、施工責任は元請業者にあります。配置技術者の不在による建設業法違反の処分を受けた場合、営業停止や建設業許可の取消につながる可能性も考えられます。
また、一括下請負に出された工事は「実質的に工事を行っている」とは認められないため、経営事項審査で完成工事高に加えることができません。
この件に限ったことではありませんが、法解釈のみではなく個別事例について判断されますので、事前に行政や専門家に相談することが大切です。

なお、下請業者を保護する法律として下請法があります。
一定の場合に下請法による元請業者の対応も求められますので、こちらについては改めてまとめたいと思います。

5.下請代金の支払い

表現がどのようであっても、建設工事の完成を目的として締結する契約は「建設工事の請負契約」とみなされます。そして、この請負契約に基づく下請代金の支払いについても規定があります。

(下請代金の支払)
第二十四条の三 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から一月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。

建設業法

6.適正な契約締結

そもそも、建設業法の目的のひとつが建設工事の請負契約の適正化です。

(目的)

第一条 この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

建設業法

この請負契約について、建設業法では次のように定めています。

建設工事の請負契約の原則等

  • 契約には当事者の合意よって締結され、公正さ・誠実さが求められる
  • 契約は書面で行い、所定の項目を記載し署名又は記名押印して相互に交付すること
  • 契約内容の変更の場合は、変更内容を記載した書面に署名又は記名押印して相互に交付すること
  • この契約は相手方の承諾を得て、電子的技術により行うことができる
  • 自己の取引上の地位を利用して、不当に低い請負金額で請負契約を締結してはならない
  • 請負契約締結前に、建設業者は材料費・労務費等の内訳を明らかにして見積もりを行うよう努めなければならない

建設業法 第十八条~第二十条

適正に行われた請負契約に沿って適正な施工を確保することは建設業法の目的とするところです。
多重下請構造によって成立している建設業は、そこに関わる誰もが決まりを守ることによって、その安全性や健全さが確保されます。
業務上、押印するだけ・もらうだけになりがちな請負契約書ですが、ぜひ一度細部まで読み込んでみてください。

7.施工体制台帳及び施工体系図の作成

施工体制台帳は、工事名称や下請負人が請け負う工事内容、配置技術者の詳細、健康保険等の加入状況など、建設工事とそこに携わる人員についてを記載した帳簿です。
施工体系図は、建設工事における各下請負人の分担関係を表示した図です。
これは特定建設業者が元請として発注者から直接請け負った建設工事において、作成・備え付けが義務付けられています。

ここでは一般建設業許可取得後の義務についてまとめているため、特定建設業者としての義務となる条件等については割愛しますが、下請負人の立場であっても、元請業者やその下請業者から施工体制台帳用の資料提出を求められることがあります。
下請負人が元請・下請業者から求められた内容を通知することは、建設業法に定められた下請負人の義務です。
施工体制台帳等の作成はあくまで元請業者の義務であることにご注意ください。

8.各種届出義務

まず許可時に申請した内容について、変更があった場合には変更届等を行政庁に提出しなければなりません。提出期限も定められています。
主な変更内容は次のとおりです。

変更届が必要な内容

  • 商号又は名称の変更
  • 役員・株主・使用人等の変更(役職・勤務常態の変更等)
  • 営業所の所在地・電話暗号等の変更
  • 営業所の新設・廃止
  • 営業所の業種の変更
  • 資本金額又は出資総額の変更
  • 経営管理責任者・営業所技術者(専任技術者)の変更
  • 健康保険等の加入状況の変更
  • 建設業の廃業

また、毎事業年度終了後の4か月以内に、決算報告を提出しなければなりません。
これも変更届のひとつで、決算変更届といいます。事業年度終了届・事業年度終了変更届と呼ばれることもあります。
この提出がされない場合、5年ごとの許可の更新ができなくなってしまうため、忘れずに届を出すようにしましょう。
必要な書類は次のとおりです。

決算変更届提出時の必要書類

  • 事業年度終了の変更届出書
  • 工事経歴書
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  • 貸借対照表及び損益計算書
  • 株主資本等変動県産所および注記表 ※法人のみ
  • 事業報告書 ※株式会社のみ
  • 附属明細表
  • 納税証明書

このほかに、前回の届出以降に定款等に変更があった場合は、そちらも提出しなければなりません。

決算変更届は毎年提出しなければならないうえ、添付書類も多く、日ごろから準備が必要になります。決算後、速やかに準備して忘れずに提出するようにしましょう。
法改正などがあれば各行政庁のホームページに記載があるはずです。書式もそちらからダウンロードできますので、必ずホームページをご確認ください。

9.まとめ

法令に沿ったまとめですが、各都道府県で独自に規定を設けている場合があります。必ず許可を出している行政庁のホームページをご確認ください。
また、建設業法関連は頻繁に更新のある分野でもあります。業界の人員不足や諸経費の高騰等で、条件をつけた緩和措置が行われていますが、この法解釈は非常に難解です。
不明な点、あいまいな点は独断で解釈せず、個別の事例を行政庁に確認を取ることをお勧めします。

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この記事を書いた人

松本素美

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