建設業許可の要件(一般・知事許可の場合)
今回は建設業許可の要件についてまとめたいと思います。
とはいえ、この許可要件は非常に複雑ですので、ごく基本的な部分のみのまとめです。
ここに当てはまらないからといって許可取得をあきらめなければならないというわけではなく、むしろ建設業許可申請を取り扱う行政書士は、この部分の引き出しを多く持っています。
まずは特定建設業でなくてもよい(=一般建設業)、営業所を単一の都道府県にのみ持っている場合(知事許可)についてまとめます。
許可を得るためには建設業法7条に規定する4つの許可要件を備えていること。かつ、同法8条に規定する欠格要件に該当しないことが必要です。
「建設業の経営の専門家がいる」「建設業の技術の専門家がいる」「一定以上の財産がある」「誠実に業務を行う」「不適当ではない」の条件を満たせば許可を得られるということです。
1.経営業務管理責任者がいること
適正な建設業の経営を期待するために、建設業の経営業務について一定期間の経験を有した者(経営業務管理責任者、経管)が必要です。
許可を受けようとする者が法人の場合は常勤の役員のうちの1人が、個人である場合には本人または支配人のうちの1人が次のいずれかに該当しなければなりません。
- 建設業に関する経営業務の管理責任者として5年以上の経験
- 建設業に関する経営業務の管理責任者に準ずる地位として5年以上の経験
- 建設業に関する経営業務の管理責任者もしくは管理責任者に準ずる地位の者の直接の業務補助者として6年以上の経験
1の場合は建設業を営む法人の常勤役員や個人事業主が該当します。2や3は執行役員や支店長、事業主の配偶者などが該当しますが、実際の申請のほとんどは1で行われています。
令和2年10月1日の建設業法改正により、経営業務管理責任を複数人でカバーできる要件も整いましたが、立証が難しいことが多いようです。熊本県の「建設業許可の手びき(簡易版)」によると、上記1以外による申請では個別ケースごとの審査になるため、許可行政庁に問い合わせるよう指示されています。
また令和2年の建設業法改正により、適切な社会保険への加入も建設業許可の条件に追加されています。許可取得後であっても未加入が発覚した場合、許可の取消事由となりますのでご注意ください。
ざっくりとにはなりますが、法人の場合、健康保険・厚生年金保険は役員・従業員ともに加入義務があり、雇用保険に関しては常用従業員について加入義務があります。
個人事業主の場合、家族従業員を除く従業員が5人以上の場合は従業員について健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入義務があり、従業員が5人未満の場合は従業員の雇用保険の加入義務があります。
これらはそれぞれ健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法に従って、社会保険に加入すべき者がちゃんと加入しているかを許可申請の際に確認されるということです。建設業許可を取得するために特別な加入条件が追加されているのではありません。
2.各営業所に営業所技術者(専任技術者)がいること
許可を受ける営業所それぞれに、その営業所に常勤(テレワークを含む)し、専らその職務に従事する、その許可を受ける業の技術者が必要です。
令和6年の建設業法の改正により、従来の「専任技術者」は「営業所技術者」に名称が変更されました。
建設工事における技術的な指導や判断を行い、現場や請負契約の信頼性を確保するのが役割です。
営業所の専任ですから、原則、複数の営業所で兼任はできません。他社の従業員や常勤役員にはなれません。また、他社で専任性を求められる役職(専任の宅建士など)にもなれません。住所またはテレワークを行う場所の所在地が勤務を要する営業所の所在地から通勤不可能なほど離れていてもいけません。
ただし、主たる営業所において経営業務管理責任者との兼任は可能で、同一営業所で複数の業種の営業所技術者を兼任することも可能です。
また、一定の条件下で現場に出ることや配置技術者との兼務も可能です。
一般建設業許可の場合の資格要件は次のいずれかです。
- 許可業種に対応する資格を保有している者
- 指定学科の学歴があり、3~5年の実務経験を有している者
- 指定学科の学歴がない場合は、10年の実務経験を有している者
1が一番立証しやすいです。2や3でも許可申請は十分に可能ですので、複数許可申請をお考えの場合は、対象の従業員がいないか確認してみてください。
3.財産的基礎・金銭的信用があること
倒産することが明白である場合を除き、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 直前の決算期の自己資本額が500万円以上であること
- 預金残高500万円以上であること
- (更新時のみ)申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して営業した実績があること
2の預金残高は申請直近の1か月以内の金融機関の預金残高証明で証明します。融資を受ける場合は早めの準備が必要です。
4.誠実性が認められる
誠実性というのも抽象的な表現ですが、建設業法上では次のように定められている部分です。
建設業法(許可の基準)
第七条
三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
「使用人」とは商法上で規定される「支配人」「支店長」など、営業取引上重要な役割を与えられた立場の人をいい、一般の従業員とは異なります。
「不正」とは詐欺・脅迫など、法律に違反する行為です。また「不誠実」とは請負契約に定められた工期や不可抗力による損害の負担などを反故にする行為です。
具体的には、法人自体とその事業主や役員・使用人にあたる者が建築士法や宅地建物取引業法等に違反する等して免許等を取り消され、取消から5年経過していない場合、原則的に許可基準を満たしていないものとして扱われます。
5.欠格要件に該当しない
建設業法第8条に1つでも該当する場合、上記が整っていても許可はされません。また、欠格要件に該当すれば、取得している建設業許可(以下、許可)も取り消されます。
欠格要件には次のようなものがあります。
- 成年被後見人、被保佐人、もしくは破産者で復権していない者
- 許可を取り消され、取消から5年経過していない者
- 許可の取消を免れるために廃業を届け出て、その届出から5年経過していない者
- 許可の取消を免れるために廃業を届け出た事業者について、取消処分の通知前60日以内にその事業者の役員等であった者で、廃業の届出から5年を経過していない者
- 営業停止を命じられ、その停止期間を経過していない者
- 許可を受けようとする建設業について営業を禁止され、その禁止期間を経過していない者
- 拘禁以上の刑に処せられ、その執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなってから5年を経過していない者
- 特定の法令(建設業関連法令や暴力団関係法令等)への違反による罰金刑を受けてから5年を経過していない者
- 暴力団員である者、または暴力団員でなくなってから5年を経過していない者
- 未成年者であって、その法定代理人が欠格要件に該当する者
- 法人においてその役員等である者に欠格要件が該当する場合
- 精神疾患などで建設業を適正な営業に必要な認知、判断などを適切に行うことができない場合
- 個人事業主において、その使用人が欠格要件に該当する場合
- 暴力団関係者が事業活動を支配している場合
人的要件以外にも、許可申請書や添付書類に虚偽記載や重要な事実の未記載があった場合、それが故意であるかどうかに関わらず許可が認められません。
実務経験や勤務実態など、誠実に申請することが大切です。
許可取得後に虚偽記載等が判明した場合も許可の取消が行われる場合があります。
6.許可取得と維持のための管理
建設業許可には取得時の要件だけでなく欠格要件があるため、取得してしまえば終わりというわけにはいきません。欠格要件に該当しないか、その恐れはないか、社内に定期的にチェックする仕組みを整えるとより安心です。
建設業許可を管理する部門や委託先の行政書士を有効に利用してください。